あらすじ
神託が、人の判断に代わる世界がある。
宗教国家リュネリアでは、神官が神の言葉を伝え、
人々はそれに従うことで秩序を保ってきた。
一方、帝国アストリアでは、神官の不在が裁きや祭事の停滞を招き、
民の不安と不満が静かに広がりつつあった。
そんな二国の間で、
本来行き来するはずの神官と物資が、
いつの間にか途絶えている。
誰が奪ったのか。
どこで消えたのか。
それとも――誰かが「判断を止めた」のか。
辺境の村で育った青年エリアスは、
薬草と剣の両方を知る少年だった。
神託を待つより先に、
目の前の命を見てしまう――
ただそれだけの理由で、
彼はしばしば「決まり」を越えてしまう。
一方、名を隠して旅をする青年セリウスは、
王族として生まれながら、
肩書きを持たぬまま世界を見ることを命じられていた。
彼の旅は、
血と権威ではなく、
人がどう動くのかを知るためのものだった。
神託に従う者。
制度を守る者。
血統を重んじる者。
そして、
目の前の現実から逃げられない者。
神が沈黙する時、
誰が決めるのか。
正しさは、
いつも一つではない。
だが、
誰かが引き受けなければならない。
これは、
境界に立つ者たちが、
答えのない世界で判断を引き受けていく物語