あらすじ
「愛なんて、死んでしまえばただのゴミよ。――さあ、未練を捨ててその泥水を啜りなさい」
三途の川のほとり、紅く燃え広がる曼珠沙華の中に、その美しき「毒舌女神」はいた。 名は紅薬(こうやく)。死者の記憶を奪い、輪廻へと送る冥界の番人――人は彼女を「孟婆(もうば)」と呼ぶ。
彼女の仕事は、死者が生前に抱いた愛おしい記憶を、一滴のスープで無慈悲に消し去ること。 冷酷で、傲慢で、誰よりも美しい彼女は、万年の間、数多の魂を嘲笑い続けてきた。
しかしある日、彼女の前に一人の男が現れる。 数千の矢を浴び、漆黒の甲冑を纏ったまま死の淵から這い上がってきた戦神・朔夜(さくや)。 彼はスープを拒み、狂気的なまでの瞳で彼女を見つめて言い放った。
「三千年前、俺は誓ったはずだ。地獄の底まで、お前を迎えに行くと」
それが、天界をも揺るがす「禁断の恋」の再燃だった。 彼女はなぜ、神格を捨ててまで忘却の番人となったのか? 彼はなぜ、幾千の転生を繰り返してもなお、彼女の名前を叫び続けるのか?
天道が定める「秩序」という名の残酷な運命。 記憶を消さなければならない女神と、記憶を守り抜きたい戦士。
これは、世界に裏切られた二人が、輪廻の鎖を断ち切り、神々を殺してでも愛を貫く――壮絶なる愛と復仇の物語。