あらすじ
フェアトルス王立学院に通う、研究科高等部一年のユーリ。
彼は日々面倒ごとには関わらないように、注意して学院に通っていた。
そんな彼には、もう一つの顔がある。
太陽が隠れ、月が世界を照らす夜。黒き陰が動き出す時、また彼らも動き出す。
「あぁぁぁ!?」
後ろに右目に傷のある狼が描かれており、それの左右を囲むように羽の模様が描かれている真っ黒のマントに身を包み、黒いカラスのような目元を隠す仮面をつけている男が叫ぶ。
そんな彼を見下ろす、左側に百合、右側に三日月の装飾が施されている目元を隠す仮面と着物のようなローブを身につけた小柄な人影。この者こそが“月影”と呼ばれるユーリだ。
男の姿は左手の指先が無く、片方の膝から下が消えていた。
「答えろ。次に襲う場所はどこだ」
「答えるわけがないだ、あァァァァ!?」
「次は右腕だ」
「はっ、こんなこと、して、俺が答えると思うのか!」
「安心しろ」
月影がそう言うと、左手の指先、消えたはずの両方の膝から下。それら全てが“元に戻っていた”。
男は驚愕した。左手の指はまだ切られたのでどうにかなるが、両足は文字通り消し飛ばされたのだ。なのに、全てが戻っている。だが、時間が巻き戻ったわけではない。床や壁に飛んだ血飛沫はそのままだ。
そう、治癒されたのだ。
しかし【完全回復】でもここまで回復しない。となると考えられるのは一つだけ。
「お前、ま、さか……」
男の予想が正しければ、月影は彼の体を壊し続け、直し続けるという地獄のような拷問を始めようとしている。
(そんなの耐えられるはずがない……!)
「わ、わかった。言う。言うから、殺してくれ!」
「なら、次に襲う場所は?」
男は月影の言葉に叫ぶように答えた。
「……そうか。感謝する」
その言葉と同時に男の首が飛んだ。
死んだ男を見下ろすように月影が立っていると、月影の背後に一人の少女が現れた。
彼女は月影と同じローブを身に纏い、左側に百合と右側に星の装飾が施された目元を隠す仮面をつけている。
「大火か」
「はい、お手を煩わせてしまい申し訳ありません。情報は引き出せましたか?」
「ああ、次の目的地は“フェアトルス学院”だ」
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面倒ごとを避けるため、日々努力し続けるユーリ・フィンセル。
彼は七歳の頃にとある組織の存在に気がついた。気づいた理由は、父親がその組織と怪しい取引をしていたからだ。その取引は幼いユーリでも、ダメなこととわかるような内容だった。
ユーリはそれから九年、鍛錬を重ねた。誰にも気づかれないように。
そんな彼は九歳の頃に、父親を止めるために組織を作った。
その組織の名は『百合蒼月』。
当時、メンバーはユーリと後に『七星』と呼ばれる七人の少年少女だけだった。
それから、七年が経った。
彼は、フェアトルス学院に通うことになり、そこでは目立たないように生活をしていた。
だが、彼の同学年の生徒の周りで様々な面倒ごとが起こり始めた。
学院の襲撃、課外授業先での予想外の魔人の復活、勇者召喚に、大会での暗躍。
様々な出来事がユーリを襲う。
そんな彼は表では平凡な一生徒として対応し、裏では百合蒼月の総帥─『月影』として暗躍する。
これは陰から“自身の目的”のために動く青年と、そんな彼に付き従う少年少女、彼が通う学院の生徒や首席たちの物語だ。