あらすじ
人間が一生のうちに「選択」に費やす時間は、どれほどになるだろう。
今日の服、昼食の献立、将来の進路。些末な、しかし煩わしい決断の連続が、僕たちの人生を「自分」という輪郭に繋ぎ止めている。
学園の華であり、非の打ち所のない令嬢・一ノ瀬詩織。
僕の幼馴染である彼女は、ある日おだやかに告げた。
「蓮くん、これからは何もしなくていいわ。貴方の代わりに、私がすべてを選んであげる」
それは、暴力も監禁もない、甘美な地獄への招待状だった。
彼女は僕を傷つけない。ただ、僕が「自分で何かを選ぶ」という摩擦を、世界から徹底的に排除していく。
僕が空腹を感じる前に最高の食事が供され、僕が失敗する前にトラブルが消滅する。
摩擦のない世界で、僕は次第に「自分」という質量を失っていく。
これは、究極のホスピタリティによって人生を奪われる少年の、幸福な自壊の記録。