あらすじ
静かな町に残る、ひとつの花火工房――星火花火店。
卒業式の日、進路を決めきれないまま立ち尽くしていた高校生・晴斗は、幼い頃に見た「拍手のなかった花火」の記憶に導かれるように、その店の門を叩く。そこで出会ったのは、廃業を決めた頑固な老職人と、花火を危険なものとして突き放す娘・美咲だった。
与えられた条件はただ一つ。
0.08グラムの火薬で、完璧な線香花火を一本作れなければ、二度と関わるな――。
才能も知識もない晴斗は、失敗を重ねながら、火と向き合い、記録を取り、理解しようともがき続ける。なぜあの花火は、あれほど心に残ったのか。なぜ静寂の中で、人は夜空を見上げたのか。
やがて舞台は日本を離れ、世界へ。
気候も文化も価値観も異なる空の下で、晴斗と美咲は「派手さ」ではなく「消え際の美」を武器に挑む。芸術と資本、伝統と利用、その境界で問われるのは――火は、何のために咲くのかという問いだった。
これは、爆音ではなく静寂で世界を黙らせる物語。
一瞬で消える火に、意味と理解を与えようとした者たちの、静かで熱い挑戦の記録である。