あらすじ
婚約者が駆け落ちした。画家の男と出会った。今は追手に追われているらしい。
「王都で内乱が起きている。レナード王子とルミエール嬢が隣国へ逃亡したことで、王家の権威が大きく揺らいでいるんだ。鎮めるために王家はフローラ様を」
ルールクアの言葉はそこで途切れた。その先は言わずとも理解できる。王家はフローラの公爵令嬢としての地位と、元王子の婚約者という立場を利用しようとしているのだ。
おそらく、レナードに代わる新たな王族の婚約者として、あるいは王家の求心力を回復させるための象徴として。
「冗談でしょ!そんなの絶対にごめんよ!私はもう誰かの都合の良い駒になるのは真っ平なんだから!」
歯を食いしばり、必死に走った。ルールクアはそんなフローラの隣で周囲の地形を熟知しているかのように、最短ルートを指し示してくれる。騎士たちの数は多く、鍛えられた彼らの足は速い。背後から追手が迫っているのが感じられた。
その時、ルールクアが不意に足を止め、フローラを物陰に突き飛ばす。
「ルールクア!?」