あらすじ
香坂恒一は、香水専門商社を辞め、オンライン占いサービス「占いの街」を立ち上げた。
彼が売りたかったのは、未来ではない。
**人が“信じてしまう瞬間”**そのものだった。
ある日、香坂は公園で一人の少女・澪と出会う。
彼女は、目の前の人間が「本来、最も輝けたはずの未来」をスケッチとして描く能力を持っていた。
占いでも予言でもない。
ただ、その人が“別の選択をしていたら辿り着いた最高の姿”が、見えてしまうだけ。
香坂は、その能力をビジネスに転用する。
澪の描く未来に背中を押され、人々は決断し、金を払い、前に進む。
「占いの街」は急成長を始めた。
やがて香坂は、無自覚に人を操る話術を持つ男・城崎文也を仲間に引き入れる。
澪が未来を示し、城崎が言葉で人を動かす。
その仕組みは、やがて新興宗教「聖域の会」の信者たちをも引き寄せていった。
信仰、救済、依存。
人の弱さを食い物にする構造を、香坂たちは逆に利用し、教団の崩壊へと導く。
だがその直後、教団幹部の女・吉田蘭が謎の死を遂げる。
現場となった雑居ビルには、
元やくざの不動産屋、
イタリアンマフィアと繋がる香水ブローカー、
そして城崎――
それぞれに動機を持つ者たちが集まっていた。
だが、誰が殺したのかは分からない。
分かるのはただ一つ。
麻薬は消え、金だけが残されたという事実。
香坂は悟る。
敵は見えない。
だが目的は明確だ。
「麻薬はいらない。金だけが欲しい」
占いは、救済か。
それとも、侵食か。
人の未来を“商品”にした先で、
香坂恒一は、引き返せない場所へと踏み込んでいく。