あらすじ
山を越えた者は、帰ってこない。
そう言われ続けた閉ざされた集落で、ガルドは育った。
背後は断崖。
前には“主”の棲む山。
逃げ場のない世界で、生き残る方法だけを教えられた少年。
だがある日、山の主が現れ、育ての親は命を落とす。
生き延びたガルドは五年を山で過ごし、
恐怖を消すためだけに、剣を振り続けた。
一方、集落で迫害を受けながら祈り続けてきた少女セラ。
神のいない世界で、祈ることで自分を守ってきた彼女は、
祈るたびに“痣”という代償をその身に刻まれていく。
祈りは奇跡じゃない。
恐怖に耐えるための行為であり、
使えば使うほど、何かを失っていく力。
何も信じない男と、祈らずには生きられない女。
二人は主を越え、
「地図のある世界」へ足を踏み入れる。
だが――
そこに待っていたのは、自由ではなく、
役割、評価、管理、そして“使われる力”だった。
世界は、まだ終わっていない。
ただ、通す気がないだけだ。
それでも、歩く。
地図に載らない先へ。
これは、
世界を救わない二人が、世界を渡っていく物語。