あらすじ
「空を食べる」ことが
当たり前となった世界。
美しい気象は貴重品であり、
特殊な瓶で採取され、
食べられれば減ってゆく。
透き通るような『青空』は甘く、
七色の『虹』は
とろけるような贅沢品として
王侯貴族に独占されており、
美しい天気は
失われて久しい。
一方で、
庶民が口にできるのは、
湿った塩味の『曇天』ばかり。
そんな格差の果て、
廃棄場の片隅で店を構える
気象調理師ソラは、
誰も見向きもしない
「空のゴミ」を
拾い集めていた。
肺を焼く酸性雨。
喉を切り裂く
汚染された雷。
王族が空を食べ尽くした果ての
「最悪の天気」を、
ソラは熟練の腕で、
「一度食べたら忘れられない
猛毒のようなスパイス」へと
作り変える。
「……薄めた青空なんて、
腹の足しにもなりやしない。
腹を満たしたいなら、
俺の作る
泥混じりの『雷(いなづま)』の方が、
よっぽど血になるぜ」
ある日、
退屈に飽いた国王が、
下層街で噂の
「刺激的な料理」を所望した。
ソラは冷たく微笑み、
懐に猛毒のスパイスを忍ばせて、
王宮へ向かう。
それは、
優雅な晩餐会を
地獄へと変える、
狂乱の始まりだった。
美食と依存が、
世界の上下を
ひっくり返す。
1,427文字で描かれる、
「空」をめぐる
破滅的グルメ・ファンタジー。