あらすじ

橘ハイツの共用室に置かれた木製棚が、老朽化を理由に「一月二十五日までに撤去」と告げられる。棚が好きな住人・想生は、撤去されるくらいなら作り替えようと決め、杉板を抱えて動き出す。管理担当の将之は淡々と大家へ条件を伝え、几帳面な愛来亜は固定方法や重量の偏りまで指摘する。 一方、木くずだらけの廊下に苛立ちながらも、想生のそばにいる怜は「寂しいのは棚だけ?」と踏み込む。けれど返ってくるのは棚の話ばかり。さらに夜、共用室の外で耳にしてしまう——想生の「これは恋じゃない」という低い声。怒りと冷たさに満たされた怜は、棚を残すための段取り表を作り、皆を巻き込んでいく。 期限前日、角の丸い新しい棚が完成する。揺れない棚、甘い杉の匂い、戻っていく背表紙。最上段には、怜が置いた一冊の文庫本と「次は私の話も聞いて」の一行。そこで明かされる「恋じゃない」の真相は、切り餅のベタベタ——。棚をめぐる誤解がほどけたとき、想生はようやく“棚以外の寂しさ”に手を伸ばす。 木くずと背表紙と餅の粘りで、すれ違いが少しずつ温まっていく、共同生活の小さな恋の話。

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エブリスタ
エブリスタ2026/01/07
  • 現在の作品餅より粘る、本棚の話