あらすじ

地図から消えた砂漠の地に、ただ一人とどまり続ける語り手がいる。 人々が去り、希望や祈りという言葉さえ意味を失った場所で、語り手は「理由」を持たないまま生き続けている。そこにあるのは使命感でも執念でもなく、かつて雨が降り、花が咲いたという消えない記憶だけだった。 昼の静けさの中では疑いはなく、夜になると「何も起こらなかったらどうするのか」という問いだけが、答えを求めずに浮かび上がる。語り手はその不安を否定も肯定もせず、ただ自らの鼓動を確かめることで、今日を生きている事実を受け入れていく。 やがて、説明も前触れもなく雨が降り、砂漠に花が咲く。奇跡と呼ぶにはあまりに短く、誰のためでもないその出来事を、語り手は感動や高揚としてではなく、静かな事実として見つめる。花はほどなく枯れ、砂漠は再び元の姿へ戻るが、その一瞬は語り手の内側に、言葉にならない確かさを残す。 物語は、希望の成就や救済を描くのではなく、「信じる」という行為が選択や信念ではなく、ただ消えなかった記憶として人を生かし続けることを描いて終わる。奇跡は世界を変えず、語り手もまた変わらない。ただ、生きてそこに立ち続けたという事実だけが、静かに残される。

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エブリスタ2026/01/07
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