あらすじ
鋭い刃と唯一の鞘。 二人の日常は世界を斬る。
実業家の父と研究者の母を持ち、広い邸宅で孤独を抱えていた少女・桐崎美玲。
彼女の閉ざされた世界に、ひとりの少年が踏み込んだ。
相浦陵。
紀元前から続く古流武術「神源流」の跡取りとして生まれた、どこか現実離れした少年。
二人は「普通」とは程遠い環境にいながらも、ゲームをし、夕食を囲み、静かで壊れやすい日常を築いていく。
それはあまりにも小さく、けれど確かに温かな時間だった。
高校一年の夏。
当主としての経験を積むため異国の戦場に立った陵は、初めて人を殺し、何も感じなかった自分の異常性に絶望する。
だが、美玲はその罪も欠落も拒まなかった。
彼女は陵を人として繋ぎ止める、唯一の「鞘」となる。
高校の卒業式。
当主の証である伝説の刀を手にした瞬間、世界は裏返る。
二人が辿り着いたのは、異世界「ハルディア王国」だった。
魔力を持たぬと侮られた陵は、王国最強の騎士を一撃で制圧する。
そして、自分たちを道具として扱おうとする王に、冷徹に告げた。
「報酬を提示しろ。納得できる内容なら、手を貸してやる」
圧倒的な暴力を内包しながらも、信じるのはただ一人の少女だけ。
彼を理解し、寄り添い続ける聡明な少女。
これは、世界がどれほど変わっても、
二人だけの「日常」を貫き通すために戦う物語。