あらすじ
他人の声が「色」となって視界を侵食する共感覚を持つ「私」。賑やかな教室は、逃げ場のない極彩色の牢獄だった。
夏休み明け、クラスの中心にいる理香が、北海道土産を配り歩く。喜色を滲ませる彼女の声からは、眩いばかりの「ソーダブルー」が溢れ出し、友人たちを鮮やかに染め上げていく。しかし、私にだけはお土産は渡されなかった。境界線の外側に取り残された私の喉の奥は、ちりと焼けるような惨めさに支配される。
色の氾濫に耐えかねて逃げ込んだ放課後の神社で、私は一切の色を持たない「氷の声」を持つ人外と出会う。その無色の存在は、私に冷徹な真実を突きつけた。
彼女が、なぜ「私」にだけはお土産を渡さなかったのか。その真実を知ったとき、私が自らかけていた心の「鍵」は静かに外れ、二人の上には、何色にも染まらない本物の空が広がっていく。