あらすじ
「私は、全てを忘れる事にした」
自分を責める足跡でいっぱいになった昨日を捨て、彼女は真っ白なノートのような「無」を選んだ。
音が消え、色彩が溶け、止まってしまったゆりえの時間。
けれど、その静寂を突き破ったのは、一匹のフレンチブルドッグの鼻鳴らし。
なぜだろう。何もかも捨てたはずなのに、その子の名前だけは胸の奥で光っていた。
「メルミ」――。
リードも、約束も、何もない。
けれどメルミは「半歩前」をトコトコと、たまらなく楽しそうに駆け出す。
「もたもたしてたら、置いていくわよ!」
その弾むような声に誘われ、ゆりえは空っぽのがま口を揺らして走り出す。
頬をなでる冷たい風、足の裏に伝わる確かな大地の鼓動。
旅の先々で出会うのは、タロットの象徴が姿を変えた、不思議で少し残酷な異世界の住人たち。
これは、誰かのための「正解」を脱ぎ捨てて、自分だけの「綺麗」をがま口に集めていく巡礼。
「1秒前の自分は、もう別人」
そう気づいたとき、世界は鮮やかな螺旋を描いて、あなたを新しい明日へと連れ出します。
――さあ、メルミの背中を追いかけて。
心おきなく息ができる場所まで、一緒に走ってみませんか。