あらすじ
新宿・歌舞伎町の最底辺。
ネオンの残骸と汚水が混じり合うこの街で、19歳の少女・ミウは「嘘」をついて生きている。
昼は、優しく清楚なピアノ教室の先生。
夜は、顔も知らない男たちの欲望を処理するデリヘル嬢「マリア」。
全ては、盲目の義弟・ユウのためだった。
角膜移植に必要な費用は2000万円。
身寄りのない姉弟がまっとうな手段で掴める額ではない。
だからミウは、自らの心と体を「消耗品」として切り売りする道を選んだ。
「僕の目が治ったら、姉さんの顔が見たいな。きっとすごく綺麗なんだろうね」
ユウが奏でる美しいピアノの旋律は、ミウにとって唯一の救いであり、同時に逃れられない呪いでもあった。
もし彼が光を取り戻せば、姉の正体が――痣だらけで穢れきった「マリア」の姿が、白日の下に晒されてしまうからだ。
壊れた電子音を繰り返すペットロボット「ポチ」。
廃ビルの管理人室で、紫煙を燻らせながら生きる術を説く老婆・キヨ。
そして、ミウを搾取し、嘲笑う夜の街の捕食者たち。
非情なタイムリミットが迫る中、ミウを更なる絶望が襲う。
頼れる者たちの喪失。裏切り。そして、消えた大金。
守るべき盾を失い、退路を断たれた少女は、鏡の中の自分に紅を引く。
『マリアは死んだ。これからは、ただの怪物として生きてやる』
これは、愛する弟に光を与えるため、自ら地獄の底へとダイブする一人の少女の、壮絶な愛の記録。
見えないことは幸福なのか。
真実を知ることは残酷なのか。
汚濁にまみれた新宿(ディストピア)で、彼女だけが聖母(マリア)だった――。