あらすじ
「こ、此処は何処だ……」
一度は言ってみたい台詞百選にランクインしてそうな台詞を呟いた俺は、本当に何が起こっているか分からずキョロキョロと周囲を見渡す。
ほんの数秒前まで俺は、信号待ちをしていた。
社員食堂が衛生管理の何とかで昨日今日と休みになっていたから外のコンビニまで昼食を買いに出てきたのだ。
女子ウケしそうな名前のついたサラミサンドと王道のミックスサンド、特保印の炭酸飲料、よく分からない衝動で買ってしまったバナナ一本の入った袋を片手に下げ、俺は信号待ちをしていた。
十月も半ばを過ぎようというのに、今日も暑いな。
――なんて考えながら信号待ちをしていた。
信号が変わる。
で、気がついたら此処だ。
今、俺が立ち尽くしているこの世界は、さっきまで立っていた場所とは全く違った。
山に、森に、広大な農地と僅かな家屋。限界集落特集でよくみる景色だ。
オフィス街から一転、ザ・田舎に移動するなんてまるで夢だ。
不条理な、正解のない、妄想なら夢を見ている本人の思い通りになればいいのに決して思い通りにならない。
あの自由でいて不自由な世界。
「これは、夢か? 」
再び、一度は言ってみたい台詞百選のひとつを口にしたのだった。