あらすじ
三日間の孤独な航海を終え、ジョン・ライドが辿り着いたのは、数万人がひしめき合う宙域最大の不夜城・ステーション『カッサンドラ』だった。
コクピットに響く管制官エマの快活な声。
ハッチの向こうから漂う、淹れたてのコーヒーと煙草の匂い。
耳を打つ、数千人の雑踏とジャズの旋律。
だが、ゲートをくぐり抜けたジョンの前に広がっていたのは――人影一つない、完璧な「空白」だった。
聴覚は「喧騒」を捉え、視覚は「無人」を突きつける。
存在しないはずの誰かと肩がぶつかり、何もない空間から愛する人の呼び声がする。
五感がバラバラに崩壊していく恐怖の中、突如として閉ざされたドッキングゲート。
「ねえ、ジョン。どうして逃げるの? みんな、あなたを待っているのに」
優しかったはずのエマの声は、次第にノイズ混じりの「囁き」へと変わっていく。
ここは、死者が騒ぐ幽霊船か。それとも、世界の方が狂ったのか。
逃げ場のない鋼鉄の檻で、ジョンは「見えない住人たち」の正体に迫っていく。
――聴覚と視覚の境界線が崩壊する、SFサイコホラー。