あらすじ
【没落した古都と、秘められた誓い】
明治十六年、遷都によって魂を抜かれた京都 。かつての名門・飛鳥家の嫡男、飛鳥京吾は、借金に追われ「道化」を演じて日銭を稼ぐ日々を送っていた 。彼が泥を被ってでも守りたかったのは、同じく没落した幼馴染の少女・入江紗夜 。 「お前と一緒なら、地獄でもいい」――幼き日に交わしたその言葉を、京吾は一度も忘れたことはなかった 。
【閻魔大王の選抜試験と、甘い嘘】
ある日、二人は美貌の閻魔大王が主催する『冥府検分役』の選抜試験に巻き込まれる 。課題は「一年で京都を復興させること」 。成功すれば一族の繁栄が約束されるが、失敗は許されない。 京吾はライバルを出し抜き、何より無力な紗夜を隣に置くために、閻魔の前で大胆なハッタリをかます。 「こいつは俺の婚約者だ。一蓮托生、二人で一人なんだよ」 その瞬間、ただの幼馴染だった二人の関係は、運命を共にする「偽装婚約者」へと変わる 。
【死神の手のひらと、夜の秘めごと】
二人の逆転劇は、京都を桜で埋め尽くす『一万本の桜計画』 。しかし、苗木を育てる時間は足りない。紗夜は自らの命を削り、触れたものの時間を進める呪われた異能**『星霜(せいそう)の手のひら』**を解放する 。 能力を使う代償に、紗夜の柔らかな手は徐々にどす黒い樹皮のように硬化していく 。京吾はその痛々しい変化に気づきながらも、夜ごと彼女の手をフランス製のクリームでマッサージし、指の一本一本に愛おしげに口づけを落としていた 。 「世界で一番、この手が綺麗だ」 彼のその執着にも似た献身に、紗夜は死への恐怖を忘れ、切ないほどの恋に落ちていく。
【満開の春、究極の選択】
いよいよ訪れる審判の春。京都は紗夜が命を削って咲かせた「奇跡の桜」で薄紅色に染まりゆく。しかし、一万本の開花と引き換えに、紗夜の体は限界を迎え、静かに瞳を閉じようとしていた。 かつて二人の先祖が交わした、命にまつわる因縁とは――。 京吾は、手に入れた「一族の繁栄」を捨ててでも、彼女の命を救うことができるのか。 嘘から始まった婚約の、その先にある真実の愛の結末とは。