あらすじ
「リゼット・フォーラン! 貴様のような陰気な女とは、今ここで婚約破棄する!」
王城の大広間、デビュタントの舞踏会。
婚約者であるカイル伯爵令息の声が響き渡った。
彼は私の妹である「聖女」の腰を抱き、勝ち誇った顔でこちらを見下ろしている。
周囲はヒソヒソと私を嘲笑う。
「可哀想に」「地味な姉だものな」「愛想をつかされたか」
けれど、私は泣き崩れたりしない。
むしろ、眼鏡の奥で安堵していた。
(ああ、やっと言質が取れた)
私は王城の筆頭書記官。
私の特技は『絶対記録』。そして私の手元には、カイルが横領や不貞について語った数年分の「暴言記録」がある。
これを監査局に提出すれば、彼は終わりだ。
「――承りました。では、以後のやり取りは法廷で」
私が冷淡に告げた瞬間、ざわめく群衆を割って、ひとりの男が現れる。
「その証拠、私が預かろう」
それは「氷の処刑人」と恐れられる監査局長、グレン公爵だった。
これは、地味で「記録係」と蔑まれていた私が、その几帳面さで元婚約者を破滅させ、冷徹な公爵様に溺愛されるまでの逆転劇。