あらすじ
滝川すず、三十二歳。
市内の小さな文具メーカーで事務職として働く、どこにでもいる女性だ。
特別な過去もない。
胸を張れる成功も、語るほどの失敗もない。
彼氏はいない。
親しい友人もいない。
日々の楽しみは、推しの動画配信グループの配信を見ること。
それだけ。
そうして生きてきたし、
このまま生きていくのだと思っていた。
――あの日までは。
事故で亡くなった親戚の子どもを、
ひょんなことから引き取ることになる。
子どもの頃、私によく懐いていた男の子。
今は十七歳の高校生、吉見悠斗。
再会した彼は、驚くほどのイケメンになっていて、不安と、ほんの少しの期待が胸をよぎった。
けれど、そんな私に向かって、
彼は平然と言い放つ。
「ジッと見られると気持ち悪いんですけど」
これは、
私と彼が交わすことになる
ちっぽけで、でも忘れられない約束の物語。