あらすじ
大阪の時計製造会社でナンバー2として働く高瀬は、
人を強く引っ張ることができない自分に不安を抱えながら、
日々の仕事に向き合っていた。
厳格で怒鳴る父のもとで育った彼女にとって、
「声を荒げて決めること」は恐れの記憶と結びついており、
決断する立場に立つことを無意識に避けてきた。
実家を出て大阪へ出た高瀬は、
偶然出会った時計店で働き始め、
時間を正確に整える仕事に居場所を見つける。
やがて社長の右腕となり、次期社長候補として名前が挙がるようになるが、
自分にその役目が務まるのか、迷い続けていた。
そんな中、社長の事故により、高瀬は突然社長代理を任される。
納期と品質の板挟みの中で判断を遅らせ、
現場に負担をかけてしまった彼女は、
「一人で決めること」の重さに打ちのめされる。
しかし、無言で作業を続ける職人・森下や、現場の声に触れることで、
決断とは誰かを押し切ることではなく、
時間を正しい位置に戻すことなのだと気づいていく。
やがて高瀬は、出荷停止という難しい判断を、自分の言葉で静かに下す。
その決断は怒鳴ることも、
急かすこともなく、
現場の信頼に支えられながら受け止められた。
父の記憶と向き合い、
過去の恐れを乗り越えた彼女は、
「決める人」として一歩を踏み出す。
完璧ではなく、迷いを抱えたままでも、針は進み続ける。
この物語は、強さではなく、静かな責任によって成長していく一人の女性の姿を描いている。