あらすじ
公私にわたって不具合なことが起こり身の置き所を失った私は、旅に出ることにした。海辺の町に逗留したが思い出さないでいいことばかり頭に浮かんでくるので、動き続けることにしようと夜汽車に乗った。その車中で出会った古めかしい服装の男は、自分と兄の間に起きた「怪事件」のことを私に語り始めた。
——男がまだ少年だった頃、彼にはギリシア神話に登場する永遠の美青年エンデュミオンを思わせる美しい兄があった。彼は兄を深く愛していたが、その兄は自らの二重身(ドッペルゲンガー)に魅惑されており、そのことに彼は心を痛めていた。
兄の解放を目論んだ彼は、仏蘭西風のアパルトマンを借り、そこに最高級品のベネチアンミラーを据えた・・・
美しい兄妹の耽美的な愛の物語を書くため、江戸川乱歩の名作「押絵と旅する男」を本歌取りする形創作してみました。
本歌には遠く及びませんが、独特の世界は描けたと思っています。どうぞご一読ください。