あらすじ
顔を変えた。
それで人生が変わると思っていたわけじゃない。
ただ、この顔で生きてきた自分を、一度終わらせたかっただけだ。
整形後、街を歩く彼女に向けられる視線は、確かに以前とは違っていた。
だが、扱いが変わっても、心は追いつかない。
下を向く癖、愛想笑い、拒絶を恐れる距離感――
それらは新しい顔の下に、そのまま残っていた。
何を求めているのか分からないまま歩く街で、
彼女は偶然、新人マネージャーから声をかけられる。
それは夢を語られる瞬間でも、救われる出会いでもない。
ただ、名前のないままの彼女に、ひとつの選択肢が置かれただけだった。
アイドルになる覚悟もない。
芸能界に行きたい理由もない。
それでも、電話を取ってしまう。
断らなかっただけの小さな選択が、静かに日常をずらしていく。
これは、
整形で人生を変える物語ではない。
アイドルとして成功するまでの物語でもない。
顔を捨てたつもりの女が、
それでも残ってしまった「自分」と向き合いながら、
やがて“名前を呼ばれる存在”になっていくまでの物語。