あらすじ
「凶は、当たったことにされる。――だから何かが、起きるのではない。何かが起きるから、凶が必要になる」
後宮で未来を占う十七歳の易者、玉玲(ユイリン)。
彼女は、後宮で誰よりも易を信じていない。
天の言葉に耳を貸す代わりに、彼女が視るのは「磨かれた石床の冷たさ」であり、「帳簿に残された筆跡の乱れ」だ。
ある夜、若き妃が不審な死を遂げる。 死体の傍らには、玉玲の筆跡を模した偽りの「凶」の卦。
それは、彼女に罪をなすりつけ、真実を闇に葬るための、何者かによる舞台装置だった。
「吉は刃になる。――そして刃を持つのは、私だけじゃない」
完璧に整えられた帳簿。 現場に残された、折り目の違う二種類の「凶」。
そして、記録に打たれた朱の「点」と「線」。
玉玲は、自身の商売道具を雑に扱った犯人の「不快感」を胸に、後宮のシステムそのものを逆手に取ったロジックで反撃を開始する。
信じる者から消えていくこの伏魔殿で、易を信じない易者は何を切り捨てるのか。
これは、冷徹な理性を武器に、血塗られた未来を書き換える「偽りの占い師」の後宮本格ミステリの物語。