あらすじ
街にはクリスマスの定番曲が流れている。
雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう。
そして俺の兄は夜更け過ぎに、絶世の美女『雪絵(ユキエ)』へと変わるだろう。
……ふざけているわけではない。
これは、ダンジョンが日常となった現代日本で起きた、悲しきおっさんの事故なのだ。
俺の兄、剛田猛(ごうだ・たける)46歳。
顔面凶器。
泣く子も黙る強面ベテラン探索者。
しかしその実態は、借金苦に喘ぐ底辺ソロプレイヤーだった。
ある日、兄はダンジョンで呪いのアイテム『シンデレラのチョーカー』を拾ってしまう。
その呪いとは「深夜0時から日の出まで、可憐な美少女に変身してしまう」というふざけたものだった!
「この姿なら……稼げるかもしれねぇ」
兄は決断する。
正体を隠し、美女『雪絵』としてダンジョン配信を行うことを。
だが、兄には致命的な欠点があった。
中身がゴリゴリの昭和のおっさんであるため、可愛い女性の演技ができなかったのだ。
苦肉の策として彼が選んだキャラ設定。それは――新宿二丁目仕込み(イメージ)の『おネイ言葉』だった。
「あンら、やだわ~!オークちゃんったら、顔が脂ぎってるわよ!毛穴ケアして出直してきなさい!」
(ドゴォッ!!)
華奢な美女が、おネイ口調で叫びながら、素手でモンスターをミンチにしていく。
そのギャップは、視聴者の予想を裏切る形で爆発的な化学反応を起こしてしまった。
『姉さん、かっけぇぇぇ!』
『物理(フィジカル)で解決する聖女とか新しすぎる』
『口調が独特だけど、そこがイイ!』
これは、深夜限定の最強ヒロイン(中身はおっさん)と、何も知らずに熱狂するリスナーたち、そして胃薬が手放せない弟(俺)が織りなす、勘違いダンジョン配信コメディ。
兄は言った。
「きっと君は来ない」と。
いや、視聴者は来る。
数万人単位で。