あらすじ
「このマグカップ、あなたにあげます。もう二度と顔も見たくないので」——五年間尽くし続けた婚約者から「退屈で地味な女」と切り捨てられたリーゼロッテ。泣き崩れるどころか、彼女が返したのは使い古しのマグカップだけだった。実は彼女には秘密がある。魔力を込めた器を作る希少な血筋——毎朝淹れていたお茶が婚約者の心身を癒していたのは、器に宿る彼女の力のおかげだった。それを知らず、知る価値もないと捨てた男に、空っぽの器を返してやったのだ。実家に戻ったリーゼロッテは、封印していた母の工房で再び轆轤を回し始める。自分のために、自分の器を焼くために。一方、彼女を失った元婚約者は眠れない夜に苛まれ、新しい婚約者のお茶では満たされない渇きに気づき始めて——。婚約破棄から始まる、陶芸令嬢の再出発の物語。温かな器に込められた想いが、やがて王宮をも動かす奇跡を起こす。これは「退屈な女」が本当の自分を取り戻し、真実の愛と出会うまでの物語。