あらすじ
満足だった。
病に蝕まれながらも最後まで卓を囲み、ゲームマスターとして物語を完結へ導いた。
楽しい人生だった。そう思って、死んだ。
次に目を覚ましたのは、剣と魔法の異世界。
見たことがあるはずのない景色なのに、どこか懐かしい。
街の雑踏、酒場の匂い、旅人の視線。
それらが、長い夜を越えて描き続けた物語の気配に、よく似ていた。
不思議と、混乱はなかった。
受け入れるだけの理由が、胸の奥にもう揃っていたからだ。
そして彼にはひとつだけ、奇妙な力がある。
自分がかつて創り上げた“登場人物たち”に、手が届きそうな感覚。
もし、それが本当なら。
もし、机の上の空想だったはずの彼らが、同じ空を見上げて笑えるのなら。
もう一度、物語を始めよう。
今度は盤上じゃない。結末も、正解もない。
ただ、共に歩いて、この世界を味わい尽くすために。