あらすじ
雪深い冬の夜、旧式のアンドロイド・ロクと、死の床にある98歳の老婆・トメの最期の交流を描いた短編小説。
意識が混濁したトメは、真冬であるにも関わらずお盆だと思い込み、亡き夫の霊が迷わず帰ってこられるよう精霊馬(きゅうりの馬)を欲しがる。きゅうりなどあるはずもない季節、絶望するトメの心を救うため、ロクは自身の維持機能を犠牲にする決断を下す。
ロクは納屋で見つけた思い出のサイダー瓶を削り出し、自分の足のパーツと予備電源を埋め込んで、内側から緑色に輝くガラスの精霊馬を作り上げた。寿命を削って完成させたその馬をトメに手渡すと、彼女は光の中に夫の訪れを感じ、安らかに息を引き取る。
主人の最期を看取ったロクもまた、バッテリーが尽き、トメの手を握ったまま静かに機能を停止する。二つの魂が寄り添うように旅立つ、切なくも温かい結末。