あらすじ
この世界には「悲しい死」が存在しない。人間が死ぬと、肉体は腐敗することなく「結晶の花」へと変化し、永遠に美しく咲き誇るからだ。
そして、死んだ瞬間に発動する忘却の法則」により、残された人々の記憶から死者に関する情報が物理的・概念的に消滅する。
親が死ねば、子は「最初から親などいなかった」と思い込み、恋人が死ねば、残された指輪の意味さえ理解できなくなる。人々は死体を「輝石」と呼ばれる美しい資源として扱い、街灯の燃料や通貨として消費する。
そこにあるのは、残酷なまでに透明で美しい、「誰も死を悼まない世界」である。
そんな世界で主人公レインは死者を忘れることができない「記憶の呪い」を持つ少年。世界で唯一、美しい宝石の森が「死体の山」であることを理解し、人々の笑顔が「忘却」の上に成り立っていることに吐き気を覚えている。
世界で、唯一「死」を理解できる少年の孤独な旅を描く物語。