あらすじ
雨が降り続く午後。
部屋でひとり過ごしていた綾は、隣室から聞こえてくるピアノの音に導かれるように、しぐれのもとへ向かう。
雨音とショパンの旋律、漂う香りと沈黙。
近づく距離に比例して、言葉にできない感情が静かに高まっていく。
触れそうで触れない指先。
与えられそうで与えられない一瞬。
主導権を握るしぐれの視線と、逃げ場を失っていく綾の心。
やがて交わされる、たった一言の「好き」。
それだけで十分だと知ってしまった午後。
雨の残響の中、二人の鼓動だけが重なっていく。
確かめ合うように、溶けるように、静かに。