あらすじ
小学校を卒業し、中学一年が始まる春の頃……地方の小都市、いわゆる「町」からニュータウンの様相を呈した都市郊外の「街」に引っ越してきた十二歳の少女の篠田琴美(しのだことみ)。
中学生の彼女は付近では有名な浮浪者風の葉巻をくわえたオジサンと公園で出会う。琴美とオジサンはテグジュペリの「星の王子さま」の本を介して、琴美の他所者意識から来る「異人感」と、オジサンの他の人々とは違う「異人感」につながる、共有の「孤独」に既視感を持つ事もあってか、琴美はオジサンと奇妙にも親交を深めていく。
一方で琴美は引っ越してきた事による環境の変化から、家族間の齟齬や新しい友人達との軋轢。また、初潮の始まりや胸の膨らみによる、少女から大人に移りゆく肉体の成長への嫌悪。そして、クラスメートへの淡い初恋の思慕。それらに対して自分自身に違和感を覚え、変わりゆく「全て」に戸惑いを隠せなくなる。そんな日々の折、琴美は妄想に逃げ込むようになり、不思議な印象を持つオジサンを、星の王子さまのような宇宙人ではないかと考え始めた。