あらすじ

柴田 恭太朗さんの【三題噺 #129】「草」「空」「温める」に参加しています。  妻の冬美(72歳)の時間は、50年前で止まっている。  認知症を患う彼女は、雪の日になると必ず家を抜け出し、今はもう廃線となった旧駅舎へ向かうのだ。  「もうすぐあの人が帰ってくるのよ」  夫である信造(75歳)は、言葉を失う。  彼女が待っているのは、現在の老いた自分ではなく、新婚当時の若き日の夫だったからだ。  言葉は通じない。現実は届かない。  ならば、俺の方から会いに行ってやる。  信造は決意する。荒れ果てた廃駅を修繕し、若き日の制服を纏い、思い出の「シチュー」を持って、妻の待つ過去《プラットホーム》へ降り立つことを。  これは、老いと忘却という「終わってしまった現実」に抗い、夫婦の時間をもう一度だけ動かそうとした男の、一晩だけの奇跡の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/01/21
  • 現在の作品廃線駅の待合室には、二人分のシチューの匂いがする