あらすじ
海沿いの町に吹く風は、いつも少しだけ潮の匂いがした。
写真部の瀬戸未来は、人の笑顔を撮るのが苦手だった。
でも、転校してきた橘海斗の笑顔だけは、どうしてもシャッターを切りたくなる。
彼はいつも遠くを見ていた。
みんなの前では明るく振る舞うのに、夕焼けの中でふと見せる横顔が寂しげで、
未来はその寂しさに惹かれていった。
少しずつ距離が近づいていく二人。
けれど、ある日未来は知ってしまう——海斗が転校してきた本当の理由を。
「俺、もう長くここにいられないんだ」
そう告げた海斗の声は、波の音と一緒に、未来の胸へ落ちる。
忘れたいのに、忘れられない。
触れた温度も、笑い声も、写真に残した笑顔でさえも——。どれも、未来の心を離れなかった。
だから未来は、最後に祈るように言葉を残す。
——君に恋した私を、忘れてください。
本作の表紙イラストには、「ノーコピーライトガール」様!配布されているフリー素材を使用させていただきました。
ありがとうございます。