あらすじ
金婚式の朝、私は五十年連れ添った夫に離婚届を突きつけた。
政略結婚で嫁いだ日から、ずっと愛されることはなかった。「氷の公爵」と呼ばれる夫は、幼馴染の侯爵令嬢の話ばかり。私に向けられる言葉はいつも冷たく、感情を見せてくれたことなど一度もない。
子供たちは独立し、孫の顔も見届けた。公爵夫人としての役目は果たした。
——もう、十分でしょう?
七十歳を超えた私は決意する。残りの人生は、自分のために生きると。
北の離宮で薬草園を作り、やりたかったことを叶えていく。そんなセカンドライフを夢見て屋敷を出ようとした、その時——
「行くな」
門前に立ちはだかった夫の顔には、五十年で初めて見る感情が浮かんでいた。
氷の公爵が見せた、涙の意味とは。そして五十年越しに明かされる、すれ違い続けた想いの真実とは——。
七十歳から始まる、不器用な夫婦のやり直し恋愛譚。人生百年時代、何歳になっても遅すぎることなんてない。