あらすじ

吃音(きつおん)を持ち、言葉を発することを「海で溺れる感覚」のように感じている高校生・悠真(ゆうま)は、周囲の視線を避け、自分を「風景の一部」として押し殺して生きてきました 。 ある夏休み、家族旅行で訪れた千葉県の静かな海岸で、悠真は海に浮く無人のボートとサンダルを見つけます 。助けを呼ぼうとするものの、肝心な場面で言葉が喉に詰まり、音になりません 。絶望する暇も惜しんで海へ飛び込んだ悠真は、沈みかけていた少女・凪(なぎ)を救い出します 。意識を取り戻した彼女は、なぜか初対面のはずの彼の名前を「ありがとう、悠真くん」と呼びました 。 新学期、凪が隣のクラスの有名人であることを知った悠真は、再会した彼女から「悠真くんの『声』、嫌いじゃないし」という肯定の言葉をかけられます 。しかし、彼女と親しくなる悠真を快く思わない同級生の健太は、嫌がらせとして文化祭の劇『ロミオとジュリエット』の主役に、言葉の不自由な悠真を強引に推薦します 。 晒し者にされる恐怖に震える悠真に対し、凪は「悠真は声を失った設定のロミオを演じ、その心の声を舞台袖から凪が代弁する」という演出を提案します 。二人は猛練習を重ね、言葉を超えた魂の交流を深めていきます 。 迎えた文化祭当日。悪意ある期待に満ちた会場で、悠真の繊細な演技と凪の透明な「心の声」が完璧にシンクロし、奇跡的な舞台を作り上げました 。劇は大成功を収め、嘲笑していた健太たちも己の非を認めて去っていきます 。吃音が完治したわけではありませんが、悠真は自分の沈黙を光に変えてくれる凪の存在を支えに、前を向いて歩き始めるのでした。

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カクヨム
カクヨム2026/01/21
  • 現在の作品言葉に溺れる僕と、海で溺れた彼女