あらすじ
午前二時。
それは、彼が私を思い出す唯一の時間だった。
派遣社員として静かに生きる結衣(23)には、誰にも言えない秘密がある。
それは、新進気鋭の調香師・蓮と、夜だけを共有する関係。
彼が結衣にくれるのは、
深夜の抱擁と、他の誰かと過ごしたあとに残る香水の残り香――ラストノートだけ。
「香水はね、最後に残る香りがその人の本性なんだよ」
そう微笑む蓮は、決して自分から香水をつけない。
彼が纏うのは、いつも“誰かの痕跡”。
冬。
街に新作香水《スノーフレーク》が広がり始めたとき、結衣は知ってしまう。
その香りが、かつて自分と彼だけの夜に漂っていた匂いだということを。
――私は、恋人じゃない。
――彼にとって私は、“最後に残る素材”。
香りと記憶が交差する、
最も美しく、最も残酷な深夜の純愛物語。