あらすじ
宇都宮春菜、二十二歳。施設育ちで両親を知らず、大学近くのカフェで働きながら生きてきた。口癖は「わたし、運がいいから」。常連客の社会人・宝積寺大地と恋に落ちるが、彼の海外転職を理由に別れを告げられる。引き止めることもなく別れた一か月後、春菜は妊娠を知る。恐怖と不安に揺れながらも、「血のつながった家族」ができる温もりを選び、ひとりで出産を決意する。
周囲に責められることもなく大学を卒業し、娘・心桜を出産。店長の岡本(岡江)をはじめ、多くの人に支えられながら、春菜は母としての生活を築いていく。心桜はやがてCMオーディションに合格し、芸能事務所に所属。担当者・蒲須坂純也の誠実な配慮のもと、無理のない形で仕事を続ける。春菜は恋愛よりも、心桜の幸せを最優先にする日々を送っていた。
カフェには新たな常連、三十六歳バツイチの片岡順二が通うようになる。心桜にも優しく、遊園地への誘いを口にするが、春菜はさりげなく断る。彼は押しつけがましくなく、距離を守る「いい人」だった。岡江との会話を通じて、春菜は再婚よりも今は子育てが最優先だと改めて自覚する。
そんなある日、春菜の前に突然、元恋人の宝積寺大地が現れる。帰国した彼は、春菜に恋人のふりをしてほしいと頼み、今も想っていると告げる。過去が追いついてきたような動揺の中、心桜と対面した大地は戸惑いながらも優しさを見せる。春菜はすぐに答えを出せず、選択を保留する。
迷いながらも、春菜は気づく。支えてくれる人がいること、選べる未来があること、それ自体が幸運なのだと。だから今日も彼女は言う。「わたし、運がいい」。小さな幸運を胸に、心桜とともに明日へ進んでいく。