あらすじ
一九九〇年代の雨音、二〇〇八年の青白い液晶、そして二〇一八年の穏やかな陽だまり。
一匹の三毛猫をきっかけに結ばれた、幼い日の「秘密の共犯」。
成長と共に、二人の間に引かれた不可視の境界線は、熱く、そして冷たく、静かに歪んでいく。
「愛せない」という冷徹なまでの誠実さを貫く弟と、その隣で「姉」という仮面を纏い続ける彼女。
これは、名前の付けられない関係を、誰にも侵されない聖域へと昇華させるまでの、十年におよぶ祈りと停滞の記録。
あの日、境界線の上で喉を鳴らしていた三毛猫だけが、二人の真実を知っている。