あらすじ
大学入試の前、病に倒れたとき、仕事で行き詰まったとき、景司は不安に追い詰められるたび、神仏に縋ってきた。祈りの後に訪れた思いがけぬ好転は、彼に「偶然の奇跡」を信じさせ、やがて祈りは安心を得るための習慣となる。しかし、祈っても避けられない失敗や喪失に直面したとき、信仰は支えであると同時に不安を増幅させる重荷へと変わっていく。老僧の言葉をきっかけに、景司は祈りは結果を変える道具ではなく、結果を受け取るための姿勢として捉え直す。奇跡を求めずとも、偶然の世に折れず立つこと。その静かな成熟の先に、景司なりの信仰が定着していく。