あらすじ

海霧の濃い港町アリオスでは、願いは叶う代わりに、叶った直後から胸の奥の気持ちが一つずつ薄くなる。魚市場の端では悪魔ベルモが「願い放題、月額三枚」と札を掲げ、町の人は列を作る。市庁書記タンティアゴは倉庫で題名のない黒い本を見つけ、開いた瞬間、文字が光となって逃げ、白い余白だけが増えていく。拾った石ころ――ピンクジェイド――に触れたゼクニーニの口から、飲み込んでいた「怖い」がこぼれ落ちる。  旅の修道士ヘルガンは光の軌跡を追い、薬売りのエドガーは言えなくなった屋号の代わりに瓶を磨き直す。路地裏では天使リリエルが小瓶に笑い声を集めるが、作り笑いは濁る。ベルモが「沈黙税」を上乗せし始めると、タンティアゴは市場の片隅に机を置き「言えない言葉は紙に置いていって」と札を立て、黙らずに“書く”で対抗する。  灯台の火が消える夜、四人は欠片を集め、干潮の海蝕洞で町の仕組みに辿り着く。涙はインク、笑いは封をほどく。奪われた涙ではなく、自分で流した一滴と、照れ笑い・失敗の笑い・安心の笑いを混ぜて桃色のインクを作り、契約のページを書き換える。読めない本は読める本になり、最後に残った白い余白は、町の人が自分の言葉で埋めていく場所になる。

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エブリスタ
エブリスタ2026/01/20
  • 現在の作品ピンクジェイドと読めない本 涙がインクになる港町アリオス