あらすじ
「いいよね、ハルちゃんはいつも肯(うなず)いてくれるから。私たち、親友だよね?」
新卒一カ月の私は、その言葉に窒息しかけていた。 職場の先輩、リカさん。彼女の言葉は質問ではない。逆らうことの許されない「徴兵令状」だ。 ランチタイムの十五分間、興味のない俳優の話を全肯定し、三文字の返事だけで自我を殺す。 SNSの裏垢でキャンセルされることを恐れ、月三千円のファンクラブ会報代——私の三日分の昼食代——を差し出そうとしていたその時、私はトイレの個室から一通のSOSを送った。
相手は、五十代の母。 バブル崩壊後の氷河期を、鋼のメンタルと冷徹な合理性で生き抜いてきた「昭和の生き残り」だ。