あらすじ
「君を愛しているのは僕だけど、僕を造り上げたのは、姉さんなんだ」
学校一の美少女・陽葵(ひまり)と、誰もが羨む恋人同士になった悠真(ゆうま)。
しかし、悠真が彼女に囁く言葉も、身に纏う香りも、磨き上げられた指先の感触さえも——すべては実の姉、結月(ゆづき)の手によって「調律」されたものだった。
結月の献身は、あまりに純粋で、温かい。
弟の幸福だけを願い、恋人との時間を完璧に演出する彼女の「調律」は、いつしか悠真の境界線を溶かし、彼自身の個性を「透明な空白」へと変えていく。
自分の言葉は、どこにある? 自分の意志は、誰のもの?
恐怖を抱きながらも、悠真は姉の綴る物語の中で「愛される自分」を享受し、逃れられない多幸感の重力に沈んでいく。
これは、三人の登場人物全員が、それぞれの愛によって救われる——歪で、あまりに美しい「聖域」の物語。