あらすじ
回復術師レイン・アルヴァスは、王都を追放された。
理由は単純だ。
彼の回復魔法は、誰の傷も癒さなかったから。
役に立たない術師。
そう断じられ、居場所を失った彼が辿り着いたのは、地図の端にある小さな村――ノルテ。
夜になると、井戸が音を立てて軋む村。
獣避けの結界杭は、理由もなくひび割れている。
誰も不思議に思わず、誰も直そうとしない。
レインが触れたとき、
それらは「治る」のではなく、「元に戻った」。
彼の回復魔法は、人の傷には反応しない。
代わりに、壊れた構造、歪んだ因果、
“本来あるべきだった世界”にだけ作用する。
だがそれは、歓迎される力ではなかった。
正しく戻されるほど、世界は軋み、
修復されるほど、誰かの都合が崩れていく。
壊れているのは、井戸でも、村でもない。
もっと大きな何かが、静かに歪んでいる。
これは、追放された回復術師が
「治すことの正しさ」そのものを問いながら、
壊れた世界を修復していく物語。
――世界は、本当に直されたいのか?