あらすじ
世界最大の帝国、唐。その繁都・長安の夜は、灯籠の紅い光に彩られ、異国情緒あふれる快楽の迷宮へと変貌する。舞台は、商人や兵士たちが欲望を隠さず集う平康坊の酒肆「月下楼」。
そこでは、揚州出身の妖艶な歌妓、翠蓮と玉梅が、巧みな言葉と薄絹越しに覗く白い太腿で男たちの心を翻弄していた。翠蓮が座敷で若旦那を甘い囁きで誘惑する一方、大部屋では突厥の娼婦エリナとトハラの歌妓碧月が、馬つなぎ杭を巡って取っ組み合いの大喧嘩を繰り広げる。
しかし、そんな騒動もこの街では宴の余興に過ぎない。やがて現れた三人の若き官僚や剣客を巻き込み、物語は熱狂の「野球拳」へと突き進む。酒の勢いで露わになるのは、西域の秘術「埃及蠟施術」によってツルツルに磨き上げられた、野性味溢れる肢体。驚愕する男たちと、それを見て焦燥に駆られる少女の野心。
茉莉花の香りが充満する密やかな坊の部屋で、二組の男女が重ねる情熱的な吐息。石畳に響く鈴の音と、絹の衣が擦れ合う淫靡な音色が、読者を千年前の黄金時代へと誘う。 酒と舞、そして肌の温もり。夜が明けるまで決して解けない長安の魔法を、その身で体感してほしい。官能と歴史が交差する