あらすじ
「ねえ、知ってる? 私たちの歩く大地、四百年前は地獄だったんだよ」
令和の今を生きる中学三年生の湊(みなと)は、測量技師である祖父から一本の古い芯ホルダーを託される。
それは昭和五十四年、祖父が重信川の現場で使い込んでいたものだった。
一本のペンに導かれ、湊が迷い込んだのは四百年前の伊予。
そこで彼女が出会ったのは、刀を捨て、泥にまみれ、巨石と格闘する不器用な男・半助だった。
「俺は、川の流れを変える。四百年後の奴らが、笑って歩ける大地を造るために」
敵は、数万の軍勢ではない。すべてを押し流す荒ぶる水神。 令和の「線」と、戦国の「汗」が、時を超えて重なり合う――。 これは、かつて神の領域に挑んだ男と、その意志を受け取る少女の、泥と情熱の戦記。
――あなたは、自分の歩く大地の「名前」を知っていますか?
■ 登場人物
【現代・令和】
・高橋 湊(たかはし・みなと) 愛媛県松前町に住む中学三年生。中学三年生。
推薦入試の小論文に悩む中、測量技師の祖父から一本の「芯ホルダー」を託される。それが四百年の時を超える旅の始まりだった。
・祖父・源蔵(げんぞう) かつて重信川の過酷な現場を歩き抜いた熟練の技師。
進路に迷う孫娘に、大地に刻まれた「先人の意志」を説く。
【戦国・慶長期】
・半助(足立 重信) 主君より二歳年上の古参家臣。
不器用ながら、泥にまみれ、未来のために「暴れ川」をねじ伏せる不屈の治水家。
嘉明とは主従を超えた「兄貴分」の絆で結ばれている。
・よしあきさん(加藤 嘉明) 伊予松前城主。従五位下・左馬助。
賤ヶ岳の七本槍の一人。誰よりも信頼する重信に、国造りの根幹である治水事業のすべてを託す。
・勘助(かんすけ)
重信の右腕となる実直な石工。現場の苦楽を共にし、その卓越した技術で難攻不落の堤防を築き上げる。
・雪之丞(ゆきのじょう)
主君に仕える絵師。測量や工事の記録を描き留める傍ら、重信たちの挑戦を静かに、時に鋭い感性で見守る。