あらすじ
雪の降らないはずの港町に、ある年だけ“光る雪”が降った。
冬のあいだだけ発光するその雪は、人々に「星の欠片」と呼ばれ、やがて街は観光地として賑わうようになる。しかし、光の下では誰も気づかない小さな歪みが静かに広がっていた。
物語は、古い灯台のふもとに住む少女・灯(あかり)/16歳から始まる。
色素の薄い髪、冷たい灰色の瞳、冬でも厚着をしない体質。口数は少ないが、人の感情の動きをよく観察している少女だ。彼女は幼い頃に母を失い、灯台守の祖父と二人暮らし。毎夜、街に降る光雪を記録する役目を担っている。
ある晩、灯は雪の中に“影だけの少年”を見つける。彼は触れられず、写真にも写らず、しかし確かにそこにいる存在だった。少年は自分の名前も記憶も持たない。ただ一つ、「この街が好きだった」という感覚だけを抱えている。
同時に、街では奇妙な出来事が増え始める。
光雪が降るほど、人々の願いが“形”を持って現れ、やがて取り返しのつかない選択を迫るようになる――。
灯は少年と共に、光雪の正体を探る旅へ出る。
それは同時に、彼女自身の喪失、後悔、そして「誰かを想うこと」の本当の意味と向き合う旅でもあった。
やがて二人は知る。
この冬のキラキラは、単なる祝福ではない。
それは――人が忘れてしまった記憶の残光だった。
最終的に灯は、街のためか、少年のためか、あるいは自分のためか――いずれかを選ばねばならない。
降り続ける光の雪の下で、彼女は一つだけ願う。
「もしこの街からキラキラが消えても、あなたのことを忘れない人でいたい」