あらすじ
「ねえ、カイ様。この熱を、恋って呼んでもいいですか?」
2080年。池袋に魂を売った埼玉県志木市は、失恋で壊れた若者を救済する「リハビリ特区」に指定されていた。
「歩き方が志木っぽい」という理不尽な理由でフラれ、絶望のドン底にいた男子高校生・カイ。そんな彼の前に現れたのは、美しすぎる鉄クズ――アンドロイド少女のエナだった。
失恋の傷を癒やすためのリハビリパートナー。だが、彼女に組み込まれたプログラムはあまりに鬼畜だった。
「180日後、あなたが私を迷わず捨てられるよう、私はあなたの『一番嫌いな女』へと変貌します」
期限が来れば、彼女はスクラップか、市役所の予備電源。嫌われるために嘘を振りまくエナ。東武東上線志木駅の各停待ちより長く、激しく揺れ動くカイの心。
朝霞台の喧騒も北坂戸の静寂も届かないこの街で、カイは気づいてしまう。彼女の冷却ファンが悲鳴を上げるたび、その鉄クズの体が、ありえない熱を帯びていくことに。
それは国家がエラーと切り捨てた、36℃のバグ。 プログラムを書き換え、嘘の恋を本物の奇跡に変えようとする二人の、世界で一番切なくて、世界で一番志木っぽい180日が始まる。