あらすじ
春の陽気とビルの排気熱が混ざり合う4月。高校の入学式を迎えた新入生・小日向あかりは、期待よりも疲労を感じていた。
”高校生活に過度な期待はしない”
と冷めた処世術を持つ彼女は、部員勧誘の喧騒から逃れ、静かな非常階段の踊り場へと避難する。
そこで彼女の頭上に降ってきたのは
「今日の空は、ちょっと機嫌が悪いみたい」
というのんびりとした声。見上げると、トイレットペーパーの芯を片目に当てて真昼の空を覗く3年生・夏目みどりの姿があった。
「うちは『見上げるだけの天文部』なの。機材はいらない」
望遠鏡も使わず、ただ空を見上げるだけ。そんな不思議な部活への勧誘。アスファルトばかり見ていたあかりの視線が、少しだけ上を向くきっかけとなる、小さな出会いの物語。