あらすじ
望月茜と名乗る女性は、自らの体に現れる不可解な現象に怯えていた。男性と情事を重ねるたび、あるいはその最中に、身に覚えのない真新しい「人らしき歯型」の痣が刻まれるのだ。それはまるで、目に見えない何者かによる嫉妬と呪詛の顕現のようであった。
窮地に立たされた彼女が助けを求めたのは、降魔(ごうま)一郎という男。新宿のホテルで対面した彼は、「見えないものが見える」という特異な能力を自称しながらも、極めて冷徹で傲慢、かつ洞察力に優れた人物だった。田宮は彼女を一目見るなり、本名ではない「望月茜」という名に違和感を覚え、彼女を「響子」という別の名で呼び始める。それは、彼女が「自分」という存在を否定して生きていることを見抜いての行為だった。