あらすじ
「うちには金目のものはほとんどないので、何か他に質入れできるものがあればいいんですけど」
店主は私の話を聞きながら、ぽりぽりと顎を掻いた。店主はスエさんという老人で、小柄でガリガリ、薄汚れた服に身を包んでいるが、なんとも愛嬌のある人だ。頭頂部は禿げ上がり、両耳の辺りにほんの少しの白髪が見える。皮膚は土気色をしていて、なぜかいつも真っ黒のサングラスをかけている。
「なにをいいますねん。旦那はえらい高価なもん持ってはるやないですか」
私は自分の耳を疑った。
「なにをおっしゃる。高価なものなど持っていませんよ。仕事をしても生活するだけでどんどん金は減るばかり。本当は子どものために使いたいが、そうもいかない。月々払うと約束した養育費すら滞っている状態なんです」
そういうと、スエさんはにやりと笑った
「そのお子や。あんたが大事に持ってはるお子の記憶。それは、ものすごい価値がありまっせ」
そうして私は、記憶を質入れするようになって行く。